ほうとう
【レシピ付き】歴史から紐解く~山梨のソウルフード「ほうとう」の魅力~
2022.12.14
皆さんは「ほうとう」というワードを聞いたことはありますか?ほうとうとは、山梨を代表する郷土料理です。今回は、ほうとうの歴史や特徴について解説していきます。
目次
- ほうとうってどんな料理?
- ほうとうの歴史を紐解く
- ほうとうの語源は?
- 基本のほうとうのレシピ
- まとめ
1.ほうとうってどんな料理?
ほうとうとは、山梨県の郷土料理で小麦粉を練り伸ばし、ざっくりと太く切った短い麺を、野菜やキノコなどの食材とともに味噌ベースの汁で煮込んだものです。
野菜をふんだんに使っているので栄養バツグンで、味噌仕立ての汁を飲めば、身体もほっこり温まります。使う野菜にとくに決まりはないですが、カボチャを入れて作ることが多く、カボチャを煮崩したほうが美味しいとされています。麺と好きな野菜やキノコなど、食材を煮込むだけのほうとうは、作る手間がかかりません。また、使う食材にもよりますが、麺の小麦粉や芋類によってデンプン質、肉や味噌などによってタンパク質、野菜によってビタミン類が摂取でき、栄養バランスに優れた料理といえます。
ほうとうの麺は、水で小麦粉を練り伸ばして折り重ね、幅広にざっくりと切ります。見た目はきしめんに近いです。一般的なうどんやきしめんとは違い、ほうとうの麺は塩分を混ぜません。ゆえに、麺を湯がいて塩分を抜く手間がなく、生麺から煮込むので、汁にデンプン質が溶け込み、汁にとろみがつき、ほうとう特有のうまみになります。とろみがつくことで、汁が冷めにくいことも特徴です。
また、ほうとうの麺は練り伸ばした後、コシのもととなる「グルテン」がつくられるのを待たずにすぐ切るので、食感が柔らかくなります。出汁は、主に煮干しでとって、味噌を加えて味付けをします。山形では、甲州みそがよくつかわれるようです。出汁の煮干しはそのまま鍋にいれて、具材として楽しむこともあります。
家庭では、家族みんなで食べれるよう大鍋で作ることが多く、その日にあまったほうとうは再び翌日食べます。とろみが出て味も熟れてくるので、作りたてより2日目のほうとうを好む人も多いです。
2.ほうとうの歴史を紐解く
ほうとうの発祥や時期は諸説あり、さまざまな説が挙げられています。日本では縄文時代から粉食文化が根付いており、考古学的にみると平安時代後期から戦国時代にかけての中世後期段階ですでに「ほうとう」の起源にあたる麺類が食べられていたと考えられています。そのなかでも有力な情報を紹介します。
6世紀前半に中国でかかれた、現存する世界最古の農法や調理法を示した『斉民要術』という書物に「はくたく」という食べ物が登場しています。このはくたくは、捏ねた小麦粉を親指ほどの太さに2寸ずつに切り、水に浸して薄くし、強火で煮たものを指します。このはくたくこそが、現在の「ほうとう」の起源だと考えられています。
9世紀前半、遣唐使が中国に渡ったときの生活を記した書物にも「ほうとう」と呼ばれるものを各地で3回食べたことが記録として残っています。その後、遣唐使や中国の僧により、日本にほうとうの作り方が伝えられたとされています。
「甲斐の虎」と呼ばれていた戦国時代の武将・武田信玄は、簡単につくることができ、栄養価が高いほうとうを陣昼食として重宝していたといわれています。信玄が野菜をたっぷりと入れ、作らせたものが現在の甲州風のほうとうとして受け継がれているようです。
ほうとうは人々の食生活の中心となり、「ほうとうの麺を打てないと一人前でない」とされ、かつては花嫁修行のひとつとされていました。
ほうとうが広まった理由として、山梨の気候や風土も大きく関わっています。もともと山梨は雨量が少なく、稲作に向かない地域のため、お米は貴重な食料でした。南アルプス市で出土した戦国時代の石臼からは、ほうとうの起源にあたる麺類が作られていた跡も発掘されています。
ほうとうが、一般的に人々に食べられるようになったのは近代以降です。山梨では、明治維新後の殖産興業政策で養蚕が主要産業として発展してくると、県内の畑のあちこちで桑の栽培が行われ、その裏作として麦が作られました。結果、ほうとうやおやき、おねりといった粉ものの料理が広まっていきました。ほうとうはその中でも、いろいろな食材を使って野菜や汁でかさましできるので、小麦の使用量が少なく、また味も良いことから知れ渡ったといわれています。
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/kamejii/006.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BB%E3%81%86%E3%81%A8%E3%81%86
また、ほうとうは2007年には農林水産省が決める、「農山漁村の郷土料理百選」の中の1つにも選定されています。時代を越えて山梨の人々の愛される郷土料理といえるでしょう。
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/houtou_yama_nashi.html
3.ほうとうの語源は?
ほうとうの語源はいくつか存在しているので、紹介します。
- 中国の「餺飥(はくたく)」「不托(ぷーとー)」が起源説
どちらも中国からほうとうが伝わってきた際の言葉が訛り、現在の呼び方になったという説です。
- 武田信玄の「宝刀(ほうとう)」から付けられた説
武田信玄が自身の「伝家の宝刀」で、麺を細長く切ったり野菜を切ったりして料理を作ったといわれていることから、「宝刀(ホウトウ)」の名がついたという伝説です。
- ハタク・ハタキモノが語源説
江戸時代中期より以前には、回転式の石臼は庶民に普及しておらず、製粉する際には、木や石でつくり、中を円形にくぼませ、その中に穀物などを入れてきねでつく「搗き臼」が使われていました。製粉の工程のなかで、穀物をきねで「たたく」ことから、粉にする作業を「ハタク」と呼び、穀物の粉を「ハタキモノ」と呼んでいました。「ほうとう」の語源はハタク、あるいは穀物の粉を意味するハタキモノが料理名としてなまったものではないかといわれています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BB%E3%81%86%E3%81%A8%E3%81%86
4.基本のほうとうのレシピ
ほうとうは山梨の家庭的な郷土料理ですので、自宅で簡単に作ることができます。
ここでは、実際の作り方を紹介していきます。
まずは麺づくりです。
ほうとうの麺は簡単な材料でつくることができます。
【材料】
- 中力粉200g
※「地粉」として売っている場合もあります。
中力粉がなければ、強力粉40gと薄力粉160gを合わせてもOK。
- 水90ml
【作り方】
①大きめのボウルに中力粉を全量入れ、指先で粉を混ぜながら水90mlを加える。
様子を見て、足りなければ水をごく少量ずつ加える。
②手のひらの付け根あたりで押し込むように練っていき、
ひとまとめに形成していく。
③表面がなめらかになるまで練りこんだら、ふきんをボウルにかぶせ、10分間ほどおく。
④③をねじるようにして2つに分ける。
⑤中力粉少々(分量外)を平らな台の上にふるい、生地を移し、
めん棒で伸ばして3~4mm程度のだ円形にする。
⑥四つ折りのびょうぶだたみにする。
⑦約1cm幅に切る。
※すぐにゆでない場合は、麺をほぐして中力粉(分量外)を軽くまぶしておく。
さて、麺が出来上がったらさっそくほうとうを調理していきましょう。
基本のほうとう
【材料(4人分)】
- ほうとうの麺…400g
- 白菜…200g
- にんじん…1/2本
- 大根…80g
- しいたけ…4個
- 長ねぎ…1本
- 油揚げ…2枚
- かぼちゃ…300g
- ほんだし…小さじ2
- 水…7カップ
- みそ…50g
- 七味唐辛子…適量
【作り方】
①白菜は1.5cm幅、にんじん、大根は5㎜幅のいちょう切りにする。
しいたけは5㎜幅の薄切りにし、ねぎは3~4㎝長さの斜め薄切りにする。
油揚げは幅1㎝に切る。
②かぼちゃは2㎝角に切り、耐熱皿に入れてラップをかけて、
電子レンジ(600W)で4分加熱する。
③鍋に分量の水を入れて火にかけて、沸騰直前に「ほんだし」を加え、
沸騰したら①を加えて4~5分煮る。
④ほうとうをほぐしながら③に加えて、さらにかぼちゃを加えて5分ほど煮込む。
⑤ほうとうに芯がなくなったら、味噌を加えて味を調える。薄ければ追加でほんだしを加える。
⑥器に盛り、完成。
好みで七味唐辛子をかける。
野菜を切って煮込むだけなので簡単につくることができます。ぜひ家族の分と一緒につくり、みんなで囲んで温まりましょう!
もし次の日に残ってしまっても野菜や麺からうまみが溶け出しているので、おいしく召し上がることができます。
番外編!?ほうとうでラザニア風
やわらかいほうとう麺はそのまま煮込むだけでなく、ちょっとしたアレンジでオシャレな料理にも変身します。少し変わったアレンジも楽しんでください。
【材料 2人分】
- ほうとう麺…2人分
- 牛ひき肉…200g
- にんじん…1/4本(40gぐらい)
- セロリ…1/3本(30gぐらい)
- たまねぎ…大1/2コ(100gぐらい)
- にんにく…2片
- トマト水煮缶(ホール)…1缶(400g)
- オリーブオイル(炒め用)…大さじ3
- 塩小さじ…1/2強
- こしょう…少々
- 赤ワイン…大さじ2
- オリーブオイル(絡め用)…小さじ2
- モッツァレラチーズ…100g
- オリーブオイル(仕上げ用)…小さじ2
- スイートバジル…お好みで
【作り方】
(下準備)
たまねぎ、にんじん、セロリ、にんにくをみじん切りにする。
モッツァレラチーズは5mm程度の厚さにスライスする。
バジルは洗って水気をよく切る。
①深めのフライパンにオリーブオイル(炒め用)とにんにくのみじん切りを入れて火をつけ、焦がさないように中火で炒める。
香りが出てきたらにんじん、セロリ、たまねぎを加えて3~4分ほど炒め、ひき肉を加え、さらに炒める。
②ひき肉の色が変わったら、トマトの水煮缶を加える。空になった缶に赤ワインを入れてすすぐようにしてフライパンに加え、トマトを木べらで潰しながら5分ほど煮込む。5分ほど煮たら、塩、こしょうで味を調整する。
③ほうとうを茹で、冷水で締め、ざるにあげて水気を切っておく。
④グラタン皿を2つ用意し、オリーブオイル(絡め用)を小さじ1ずつ垂らす。
麺とミートソースとチーズを二等分にしておく。用意したグラタン皿に麺を入れ、オリーブオイルと絡めて②のミートソースをかける。その上にモッツァレラチーズを乗せ、170〜200度に温めたオーブンで10〜12分焼く。
⑤焦げ色が付いてきたらオーブンから取り出し、オリーブオイル(仕上げ用)をそれぞれ回しかけ、バジルを乗せる。
5.まとめ
今回は、ほうとうの歴史を中心にオススメレシピを紹介しました。伝統的な食べ方だけでなく、ちょっとしたアレンジを加えるだけでガラリと雰囲気が変わるので、ぜひお試しください。