ほうとう

山梨のソウルフード「ほうとう」の魅力とは?由来や種類を分かりやすく説明

2022.11.15

「ほうとう」は、山梨の郷土料理として有名です。かつて山梨では、「ほうとうを打てないと嫁に出せない」と言う文化もあるほどでした。2007年には、農山漁村の郷土料理百選の中の1つに選ばれています。

この記事では、「ほうとう」の魅力や由来などを幅広く紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

目次

  1. 山梨の代表的な郷土料理「ほうとう」とは?
  2. 「ほうとう」の由来
  3. 調理方法や種類について
  4. 家庭での「ほうとう麺」の作り方
  5. イチオシ!山梨で「ほうとう」を食べるならこのお店
  6. まとめ

1.山梨の代表的な郷土料理「ほうとう」とは?

基本的に「ほうとう」は、小麦粉を練ってざっくりと短く太く切った麺を、かぼちゃやジャガイモ、しいたけやネギ、肉などの具材を加えて味噌仕立ての汁で煮込んだ素朴な料理です。野菜がたっぷりと入っており、熱い状態で提供されるので、栄養がしっかり摂れて身体も芯から温まります。

地域によっては、必ずしも麺料理の形で調理されるわけではなく、例えばすいとんのような小さな塊のものを麺の替わりにすることもあります。他にも、味噌ベースではなく醤油や小豆で味付けをしていたり、麺を冷水でしめて冷たい状態で盛り付けされたりなど、地域ごとに、ほうとうの種類があることを知っている方は少ないのではないでしょうか。

呼称は、「ほうとう」が一般的ですが、山梨県内郡内地方の一部では「ニコミ(ニゴミ)」や「おほうとう」、山梨県内河内地方では「ノシコミ(ノシイレ)」と呼ぶことがあります。稲作が適さない山間で、米に代わる主食として古くから親しまれてきました。平安時代から貴族らが儀式等で食べていたと記録されています。

2.「ほうとう」の由来

「ほうとう」は、いくつかの由来があると言われています。今回は3つの由来について解説します。

「餺飥」説

現在最も有力と言われている説として、「ほうとう」の名は「餺飥(はくたく)」を音便したものであるとされています。

奈良時代の漢字辞典である『楊氏漢語抄』に餺飥と見えており、院政期の漢和辞書である『色葉字類抄』には既に「餺飥 ハクタク ハウタウ」として記録されていることから、この時代には「はうたう」という語形になっていたことが解っています。

「ほうとう」は「うどん」よりも歴史がある食べ物ですが、伝来したタイミングは異なるとはいえ、中国から伝わってきた流れであることは間違いないです。

ハタク・ハタキモノ説

山梨県の郷土民俗研究からは、江戸時代中期まで「ほうとう」の呼称は、小麦粉で作った麺に限らず、穀物の粉を使用した料理全般に用いられていたと発表されています。

江戸時代中期以前は、回転式の石臼が庶民に普及するまで、製粉作業には搗き臼を使うのが一般的でした。製粉する作業を「ハタク」と呼び、製粉した穀物を「ハタキモノ」と呼んでいたことが由来です。

「ほうとう」の語源はハタク、もしくはハタキモノが料理名に転用されたのではないかと考えられています。①の「餺飥」に続き、有力な説です。

武田信玄 宝刀説 / 放蕩説

由来のなかでは出処不明のため根拠はないとされていますが、同音の「宝刀」や「放蕩」などを語源とする説も存在しています。

「宝刀」は、武田信玄が戦前の陣中食として「信玄が自らの刀で具材を刻んだ」と言われることを由来としています。

「放蕩」は、「空いた手間と時間で放蕩することができるために、ほうとうという名称になった」と言われることを由来としています。

3.調理方法や種類について

山梨県では「ほうとう」は家庭料理であり、各家庭で手作りされた甲州味噌や畑で育てた野菜などを使用するので、家庭ごとの味があるのが特徴です。ここでは「ほうとう」の調理方法や種類、食べ方について紹介します。

●調理・具材について

「ほうとう」の生地は、こね鉢に水を入れてから小麦粉を練っていきます。素手で練りあげた麺は、のし棒を使って伸ばし、折り重ねてから包丁で約1cmの幅広に切ります。

うどんとは違い、麺にコシを求めないので生地を寝かせることはありません。また、生地に塩も練り込まないので、麺を湯がいて塩を抜く工程もなく、生麺の状態から煮込むのが特徴です。そのため、汁にはとろみがあり、麺と汁がしっかり絡み合います。

現在は、山梨県を中心として「ほうとう」の生麺が販売されているケースが多いです。家庭用の市販品は、うどんよりやや幅広麺になっており、薄い形状になっています。飲食店では、ボリュームを出すために極広厚の麺がよく見られます。

また、麺ではなくすいとん料理に近いものも在ります。「みみ」と呼ばれる特殊な形状のものを使用することもあり、みみを入れた場合は「みみぼうとう」と言います。

汁は、味噌をといたものを使います。各家庭で作られた甲州味噌という米麹と麦麹の両方を使って仕込んだもの、もしくは米麹だけの信州味噌等の市販品を購入するのが一般的です。この汁に、カボチャが溶けるまで煮込むことが良しとされていますが、地域によって差があります。

具材は、基本的に野菜が中心です。季節によって旬の野菜を入れ、夏にはジャガイモやたまねぎ、冬にはカボチャやにんじん、里芋、はくさい、じめじやしいたけなどのキノコ類を合わせます。このように、本来は野菜や山菜のみで作られる「ほうとう」ですが、飲食店では観光客向けに肉や魚介類を入れることも多く、広く普及しています。

「ほうとう」は、たっぷりの野菜が入っているのでビタミンや食物繊維を豊富に含んでいます。他にも、芋類ででんぷん質、味噌によるタンパク質も摂ることができ栄養バランスが非常に良い料理です。

家庭では大鍋で作ることが多いですが、飲食店では1人ずつ鉄鍋で提供されます。麺と季節の野菜を入れて煮込むだけなので、作る手間がかからないのも良いですね。

●ほうとうの種類について

おざら…「冷やしほうとう」と呼ばれ、ざるうどんの形状によく似ています。湯がいたほうとうの麺を水で締め、温かい汁につけて食べます。一般的に汁は少し濃いめの味付けになっており、肉や野菜などたっぷり入っています。
小豆ぼうとう…ほうとうの麺の上に、程よく粘りのあるぼた餅のような小豆餡を乗せたものです。山梨では、「こぼうとう」とも呼ばれています。お汁粉には、お餅や白玉が使用されるのが通常ですが、替わりに「ほうとう」を入れたと考えられています。ハレの日に健康を願う食べ物として定着しており、山梨県の北西部・国中地方に位置する北杜市須玉地区など、一部の地域で祭日に食されています。

4.家庭での「ほうとう麺」の作り方

「ほうとう」の麺は、家庭にある材料で簡単に作ることができます。一緒に煮込む具材は旬の野菜がオススメですが、冷蔵庫に余っている野菜などを活用してみてはいかがでしょうか。

【材料】

夏にオススメ

・ジャガイモ

・たまねぎ

・ねぎ

冬にオススメ

・カボチャ

・里芋

・はくさい

・キノコ類

・ごぼう

●他にも、豚肉や鶏肉・魚介類を入れるのもオススメです。

【麺作りのポイント】

・中力粉 200g

(なければ強力粉40gと薄力粉160g)

・ぬるま湯 90ml

【手順】

①大きめのボウルに中力粉を入れたら、指先で粉を混ぜながらぬるま湯90mlを加え、捏ねます。

②耳たぶよりやや硬めにまとまったら、ラップか濡れた布巾をボウルにかぶせて10分間ほど寝かせます。

③②に打ち粉をしながら、生地を薄く伸ばしていきます。

④約1cm幅に切って、ほうとう麺を作ります。

⑤完成した麺を、味噌をといて具材と一緒に煮込んだら「ほうとう」の出来上がりです。

5.イチオシ!山梨で「ほうとう」を食べるならこのお店

1.ほうとう不動 河口湖北本店

http://www.houtou-fudou.jp/about.html

不動の「ほうとう」は自家製麺になります。コシのある麺を味噌仕立ての汁で煮込んでおり、カボチャや山菜など富士山麓の味覚をふんだんに使用しています。素朴な味わいの中に、素材の旨味やコクが溶け込んだ人気の「ほうとう」です。

2.甲州ほうとう 完熟屋 本店

http://kanjyukuya.jp/

完熟屋の「ほうとう」は、手作り味噌にこだわっており、毎年スタッフの手で味噌を仕込んでいます。市販の味噌の原材料の数倍も高い原材料を使用しており、配合も昔から伝わる秘伝の味噌です。昔ながらの製法で、120年以上前からある蔵で熟成しています。じっくりと発酵させた味噌によって味わい深い一品です。

3.皆吉 

https://minaki.jp/history/

皆吉の「ほうとう」は、自家製味噌でも昔ながらの麦麹を使用しているのが特徴です。麦麹をたっぷりと使い、約2年間熟成させます。そうすることで、香り高いコクのある味噌に仕上がります。

出汁もこだわりがあり、北海道産利尻昆布をはじめ、さば・あごだし・いわしなどを使用し、化学調味料を一切使っていません。毎朝出汁をとっているので、いつも新鮮な出汁が味わえます。

4.渓流 流しそうめん・ほうとう円右衛門

https://so-men.com/

渓流 流しそうめん・ほうとう円右衛門の「ほうとう」は、第五回昇仙峡ほうとう味くらべ真剣勝負」で優勝し、ほうとう名人の称号を獲得しています。「ほうとう」の山梨県ナンバー1を決めるイベントです。野菜たっぷり・栄養たっぷり・身体がぽかぽか温まる鉄鍋の一杯は、どこか懐かしい味で心が温まり優しさを感じます。

5.甲州ほうとう小作 甲府駅前店

http://www.kosaku.co.jp/tenpo-kofuekimae.html

甲州ほうとう小作の「ほうとう」は、試行錯誤を重ねもちもちとした麺の食感が特徴です。粉の配合をほうとうに最適な割合になるまで研究が重ねられました。この秘伝の割合を受け継ぎ、創業40年以来変わらない味を守り続けています。

そして、こだわっているのは麺だけでなく、野菜をベースにした秘伝の出汁と甲州ほうとう小作のオリジナルの味噌を加えています。ほうとうの素朴な味わいと力強さが感じられます。

6.まとめ

この記事では、「ほうとう」の魅力から由来・種類などを説明しました。調理も簡単で、栄養満点の「ほうとう」は、これからの寒い時期にもピッタリです。お家でも気軽に楽しめますし、山梨に旅行する際には本場の「ほうとう」をぜひ食べてみてください。