インタビュー

製麺所オーナーインタビュー:「顔の見える地元のお客さんを大切に」

2022.06.28

横尾製麺所の想い

今回のインタビューでは、福岡県北九州市にある横尾製麺所を経営する、横尾和貴さんにお話を伺いました。

横尾製麺所で3代目となる横尾オーナーは、一度東京で就職してから、Uターンで故郷である福岡八幡に戻ってきて、製麺所を継ぎました。先代からの麺づくりの技術と、地元との付き合いを大切にしながら、現代のニーズに合わせ多くのカスタマイズされた麺も、提供している横尾製麺所。

1.製麺所を始めたきっかけとその理由

3代前のおじいさまが立ち上げたきっかけは?

横尾さん:1956年、66年前、もともと市場の中で小物を売っているような商売をしていたのですが、それでは子供たちを食べさせていくのが難しくなってきて、ちゃんと子供たちを食べさせられる商売を探していたそうです。そこでたまたま、友達が市場で製麺を始めて、「これから製麺は伸びるから始めたら」との誘いをきっかけに、製麺を始めたとか。そこから会社も大きくなり、まだ製麺所が残っているので、おじいちゃんには感謝しています。

おじいちゃんの後はすぐにお父さんに継承されたのですか?

横尾さん:お父さんは中学を卒業した後、すぐにおじいちゃんの意向もあって、製麺所を継ぎました。ただ、お父さんは自身が学校でも学んでみたかった、というのもあり、自分は大学まで行かせていただきました。

横尾さんも初めから製麺所を継ぐことを考えていたのですか?

横尾さん:当時は高校卒業してから大学で東京にでて、卒業後も製麺所を継ぐことは、考えていなかったので、東京に行って営業マンをやっていました。ただ、営業の経験から「ものを作ること」「ものを売ること」が、とても大変だと痛感しましたね、特にバブルもはじけた後だったので。東京営業の大変さを痛感している中、初めて麺を作って売っているお父さんの偉大さを感じました。そんなタイミングで、お父さんから正式な依頼がきて、製麺所を継ごうと決意しました。一度就職しなかったら分からなかったことが、就職したことによって気づけました。ちなみに2代目から受け継いでからは、もう25年程経っています。 

2.現状大切にしていること 

①地元のつながりが強いと聞いてますがどういうお客さんを相手に商売していますか?

横尾さん:基本的な考え方として、「顔の見えるお客さん」「手の届く範囲内」じゃないと管理するのが難しい。何かあった時にすぐに飛んでいける、対応できる場所の範囲内でやっています。自分たちのできる範囲を超えてやろうとすると、きっとどこかで手を抜いてしまうと思うんですよ。だから自分たちができる範囲内でやった方がうまくいく、と20数年やっていて感じました。

②そしたら町の人などにも製麺を届けているのですか?

横尾さん:昔は近所の小中学校の給食や、町のお祭り、市民センターでのイベントにある焼きそばとかは、絶対に出していました。現在でも高校の学食とは付き合いがありますが、老人施設の方が多いかな。最近は子供よりお年寄りの方が多いですからね(笑)。

ちなみにさっき商談に来た人も、小倉でラーメン屋を開きたいって方で、うちのトラックをみて連絡してくれたそうです。やっぱり地元の人と仲良くしておかないとお客さんは増えていかないですからね。

 3. 苦労されていること

①以前と現在で比べて大変なことなどありますか?

横尾さん:最近はオーダーメイドの依頼のお客さんが多くて、例えばこのラーメンのスープ作ったけど、これに合う麺を作ってほしいとかは結構大変ですね。あと最近は生パスタを売っているのですが、これも元々は売っていなくて、お客さんの要望によって開発しました。ただやっぱり時間は結構かかります。ただ大変だけど、そうやってうちの麺を好きなってくれるお客さんが増えてくれますし、それが仕事なので、オーダーメイドもやっています。

別の視点から言うと、少し前はたくさん作って売っている時代だったけど、今ではそういう大量生産とかは、大手とかスーパーに任せればいいと思っています。ではどうやったら生き残れるか、それは大手さんがやらないことを、やってかなきゃいけない。それが一軒一軒細かにお客さんに対応していく、小ロットで作っていくことが求められています。

そのように一つ一つニーズを拾っていくとなると、やはり広範囲ではできないので、「手の届く範囲内」のお客さんが多くなっています。このような製麺界の中の動向を読んだうえで、うちで何をやればいいのかという側面も考えています。

4.横尾製麺所のこれからの展望について

①ズバリこれからの横尾製麺所のこれからの展望について教えていただけますか?

横尾さん:今では1日に約1万個もの麺を製麺しています。で、北九州がだいたい100万人だとすると、100人1人が食べているってことでしょ?それを考えると責任重大かなと思って、もし仮に自分が病気などになってしまったら大変なので、体調にも気を付けています。これからも、毎日待っているお客さんに、届けられるようにやっていきたいです。

②その先には4代目の息子さんへの継承もお考えですか?

横尾さん:ありがたいことに、息子(小6)が製麺所を継ぎたいと言っているので、それに向けても頑張っていかなければとも思っています。それに向かって、お客さんの地盤も固めなければいけないし、というのは最近意識して仕事をしています。上から伝わってきたものを、下に継ぎたいなと考えています。

5.最後にインタビューを終えて

今回のインタビューを通じて、横尾製麺所のオーナーである横尾さんに、いろいろな深いお話を伺うことができました。特に地元の「顔の見えるお客さん」との付き合いが大切だ、その大切なお客さんのためにカスタマイズの麺も作ることが多い、ということでした。さらにその付き合いや技術を4代目に継ぐための姿勢も、見せてくださいました。

横尾さん、インタビューのご協力ありがとうございました。少しでも多くの方に横尾さんの熱意が伝われば幸いです。

今回のインタビューに答えていただいた製麺所情報

有限会社 横尾製麺所

福岡県北九州市八幡西区穴生4丁目6番6号

http://www.yokoo-men.com/

インタビュー・文 みんなの麺 内田