ちゃんぽん

知ってた?長崎だけじゃない!全国にあるご当地ちゃんぽんの種類について

2022.11.30

ちゃんぽんと聞くと、太めの麺を使用して白濁したスープの上に、野菜やかまぼこ、魚介などがたっぷりのっている料理を思い浮かべる人が多いでしょう。加えて、ほとんどの人が長崎の名物料理と認識しているはずです。

しかし、ちゃんぽんは長崎だけでなく九州全体、そして全国各地にあるご当地グルメです。この記事では、地域によって姿形が変わるちゃんぽんを紹介します。

目次

  1. ちゃんぽんとは?
  2. ちゃんぽんの語源を解説
  3. 長崎だけじゃない!九州のちゃんぽん
  4. その他全国にあるご当地ちゃんぽん
  5. まとめ

1.ちゃんぽんとは?

ちゃんぽんは、「さまざまなものを混ぜること、もしくは混ぜたもの」を意味します。ちゃんぽんというと特に長崎のものが広く知れ渡っていますが、同じ名前の郷土料理が日本各地に存在しています。

2.ちゃんぽんの語源を解説

ちゃんぽんの諸説はいくつかあると言われていますが、最も有力とされているのが、中国語でさまざまな物を混ぜることを意味する「攙 (chān)」と、食べ物を油で炒めて調味料を混ぜ、すぐに火からおろして煮る調理法を意味する「烹(pēng)」を合わせた「攙烹」であるとされています。

この諸説と同じように言われているのが、「ごちゃまぜにする」の意味を持つ料理名、沖縄のチャンプルーやインドネシアのナシチャンプルです。中国から伝わり、各地に根付きました。

他にも、ちゃんぽんは料理としてのちゃんぽんを意味するだけでなく、「混ぜて飲む」といった意味の俗な表現もされます。

3.長崎だけじゃない!九州のちゃんぽん

  • 長崎

ちゃんぽんは九州全体に存在していますが、発祥の地は長崎です。明治時代に、長崎の中華料理店「四海樓(しかいろう)」の陳平順(ちんへいじゅん)によって考案されたのが始まりでした。当時、日本に訪れていた中国人留学生が経済的に困窮していた姿をみて、安くて栄養がたっぷり摂れる食事が必要と思い作られました。

料理のベースとなっているのは、コシのある麺・濃い味付けのスープ・たっぷりの具材です。福建料理「湯肉絲麺(とんにいしいめん)」を日本風の「支那うどん」として提供していましたが、これが「ちゃんぽん」として長崎全体に広まり、ブームになったと言われています。

ちゃんぽんの代名詞である白濁したスープは、とんこつと鶏ガラ、丸鶏等を合わせて3〜4時間ほど煮込みます。具材は、かまぼこやイカ、小エビ、ネギなどの野菜、豚肉など十数種類をラードで炒めたものです。また、スープがしっかり絡む独特の太いちゃんぽん麺には、麺に弾力を加えるために中国から伝わる唐灰汁(とうあく)が練り込まれています。

この長崎ちゃんぽんが九州全土に広まり、伝わっていく過程でローカルな食材を取り入れるなどして、姿形が変わっていきました。そして、長崎ちゃんぽんが全国的に認知されるようになったのは全国チェーンの「リンガーハット」が大きく影響しています。

  • 小浜

ちゃんぽんが最初に伝わったのは、長崎から橘湾を挟んだ対岸の湯治場だった小浜温泉でした。小浜ちゃんぽんは、小浜近海で獲れた殻つきのシバエビを入れているのが特徴です。スープにもとんこつや鶏ガラだけでなく、カタクチイワシでとった出汁を混ぜています。長崎ちゃんぽんよりもまろやかなスープです。

ご当地ちゃんぽんとして、地元小浜でちゃんぽんマップを作成したり、小浜ちゃんぽん愛好会の活動を通して全国的に脚光を浴びたりなど、小浜ちゃんぽんの周知にとても力を入れています。

  • 佐賀

佐賀県の佐賀市や武雄市では、海から離れた山の街という土地柄から、魚介の具材は使われておらず、かまぼこや野菜が大量に入っているちゃんぽんになっています。長崎県のちゃんぽんよりも、トッピングの具材が非常に多いのが特徴です。

武雄市は、かつて炭鉱で栄えた街なので、過酷な労働環境で働く炭鉱労働者のために安くて栄養価が高いちゃんぽんになりました。

  • 北九州 戸畑

福岡県北九州市の戸畑区は、隣町の八幡と同じく製鉄で栄えた街です。スープは、鶏ガラや丸鶏を使わずとんこつが中心になり、具材は、ごぼうやイカゲソを揚げたものをのせているなど、全体的にカロリーが高い仕上がりになっています。そして、最大の特徴はちゃんぽんの太い麺が細くて茶色い麺に変わっていることです。製鉄所で働く人々が、わずかな休憩時間ではやく食べられるように、蒸した麺を使っています。

製鉄の現場はとても暑く、一度入れた火は24時間燃やし続けないといけません。長く現場を離れることができなかったため、ちゃんぽんの姿が大きく変わりました。

  • 久留米

福岡県の久留米市は、小浜と同じタイミングでちゃんぽんが伝わっています。「四海樓(しかいろう)」の陳平順さんの遠縁にあたる扇善耕さんが、長崎から久留米へと移住をし「光華楼」を開店しました。これをきっかけに、久留米のちゃんぽんは労働者のために、魚介ではなく安価なかまぼこや、竹輪などの具材に変わって定着しました。安くてお腹が満たされるように工夫されています。

また、久留米のちゃんぽんは、久留米発祥であるとんこつラーメンのルーツになったと言われています。ちゃんぽんのとんこつベースをヒントに開発されました。ラーメン店でちゃんぽんを提供したり、屋台でちゃんぽんを食べたりできるお店もあります。

  • 天草

熊本県の天草のちゃんぽんは、小浜から伝わってきました。かつては船を介して長崎との交流が盛んだったので、「天草ちゃんぽん」という呼び名が発展しています。「島民食」として地元に根付いており、たっぷりの野菜と魚介、竹輪やかまぼこなどを麺が隠れるまで、大量にのせているのが特徴です。魚介をふんだんに使用しているのが、天草ちゃんぽんのポイントです。

天草ちゃんぽんも小浜ちゃんぽんと同様に、天草下島各市町の商工会議所が天草地方の国道3路線を2006年の秋から「天草ちゃんぽん街道」と名付けるなど、ちゃんぽんを中心に町おこしに取り組んでいます。

  • 水俣

天草まで伝わったちゃんぽんは、熊本県の水俣市までたどり着きます。かつては海運業者や漁師を介して長崎との交流が盛んでした。

水俣ちゃんぽんは、野菜の具材を中心にあっさりとしたスープの味付けが特徴です。麺も白っぽい色をしており、スープを吸い込む卵を使わずモチモチとした仕上がりになっています。

  • 平戸

昭和に入ってから長崎県の平戸市にも、ちゃんぽんが伝わってきました。平戸のちゃんぽんは、アゴ出汁を使っているのが特徴です。長崎と比較して、麺は太く、魚介は少なめで野菜中心の具材になっています。

4.その他全国にあるご当地ちゃんぽん

長崎から九州全土に伝わったちゃんぽんは、全国にまで認知されるようになっていきます。地域によって異なるちゃんぽんが存在しますが、とんこつベースではなくあっさりとした和風のスープを使用してるのが一般的です。

  • 八幡浜

愛媛県の八幡浜は海上交通の要所であったため、九州から四国へと久留米ちゃんぽんが伝わりました。

八幡浜ちゃんぽんの特徴は、鶏ガラや昆布、カツオなどで出汁をとったあっさり目のスープに、豚肉や野菜、じゃこ天などの練り物がたくさんのっていることです。八幡浜は海の街なので、魚介を使った出汁を活かしています。麺は太めで、中華麺を使用しているお店が多いです。

  • 彦根

滋賀県の彦根市には、近江ちゃんぽんが存在しています。1963年にオープンした食堂「麺類をかべ」の店主が、長崎でちゃんぽんを食べて独自に開発しました。

昆布やカツオをベースにして出汁をとり、野菜や豚肉の具材を炒めず煮込んでいるのが特徴です。そして、食べている途中で酢をかけ、味変をして楽しむのも定番の食べ方となっています。

こうして近江ちゃんぽんは、市内の飲食店に広まり、多くのお店で提供されるようになりました。1990年代からは、「近江ちゃんぽん」のブランド名として県内だけでなく、近隣府県にもチェーン店を展開しています。

  • 秋田

秋田のちゃんぽんは、全国にあるちゃんぽんの中でも特に個性的です。秋田県秋田市にある「チャイナタウン」が有名で、味噌味としょうゆ味の2種類が提供されています。

人気が高いのは味噌ちゃんぽんで、濃厚な味噌味のスープには、野菜と魚介、とろみのついた餡かけのスープが器から溢れそうなほど大量にのせられています。寒く厳しい冬を乗り越えるための、身体が芯から温まるちゃんぽんです。

  • 尼崎、山陰

日本各地、本州を中心としたちゃんぽんは餡かけ状のものがいくつか在ります。秋田のちゃんぽんも餡かけでしたが、兵庫県尼崎市と山陰地方も同様になります。

代表的な餡かけちゃんぽんは、尼崎市の「尼チャン」として親しまれる尼崎ちゃんぽんです。福岡県北九州市の戸畑ちゃんぽんと同じく、尼崎も工業都市であったことから、労働者向けに安くてお腹いっぱい食べれるよう変化を遂げ、今もなお愛されています。

炒めたたっぷりの野菜をスープと合わせ、とろみを加えていますが、麺をスープで煮込んでいないのでラーメンに近いです。

山陰の餡かけちゃんぽんは、とんこつや鶏ガラ以外にも、牛骨をベースにしたちゃんぽんが食べられているのが特徴です。

  • 沖縄

日本全土のちゃんぽんは麺料理として知られていますが、沖縄県ではご飯の上に野菜炒めの卵とじをのせたものを「ちゃんぽん」と呼んでいます。沖縄の大衆食堂に行くと提供されており、地元の人も日常的に食べる一品です。

味付けや具材は、お店によって異なるのが面白い点です。基本的には、野菜はキャベツや玉ねぎ、もやし、にんじんなど、肉類は豚肉や缶詰のコーンビーフやランチョンミートなどが使われていることが多いです。沖縄に旅行した際には、食堂をいくつか訪れてみるのもオススメです。

5.まとめ

いかがでしたか。この記事では、日本全国に数多く存在する「ちゃんぽん」について紹介しました。地域によって、スープや具材などが変わるちゃんぽんですが、それぞれの土地で日本人から長く愛され続けていることが分かります。

これから、旅先でご当地ちゃんぽんを味わってみたり、野菜や魚介・肉類もたっぷりで栄養が摂れるちゃんぽんなので家で作ってみたりと、ぜひ食生活に取り入れてみてください。