ちゃんらー
ラーメンでもうどんでもちゃんぽんでもない…『ちゃんらー』って何?
2023.01.05
門司港発祥の謎多きちゃんらー。地元住民のソウルフードに迫ります。
目次
- ちゃんらーってどんな料理?
- ちゃんらー誕生秘話
- ちゃんらー発祥の地、北九州市門司港はどんなところ?
- ちゃんらーを食べるならここ!門司港オススメ店
- まとめ
1.ちゃんらーってどんな料理?
皆さんは「ちゃんらー」というワードをご存じですか?なんとなく、名前からはラーメン×ちゃんぽんのようなイメージが湧いてきますが、実はお出汁は「うどん」のような和風だしです。和風だしのスープにちゃんぽん麺を入れ、トッピングはラーメン風にネギやもやし、かまぼこをのせた北九州市門司区門司港周辺のソウルフードです。
戦後、貧しい頃に、門司港周辺の食堂で食べられていたとされる郷土料理で、子どものお小遣いで食べることができ、うどんよりボリュームがある庶民の味方として大変人気がありました。家庭やお店によって出汁や具材は多少違いますが、シンプルですぐ手に入る具材を使い、簡単につくれることから今もちゃんらーは受け継がれています。この、ラーメンでもなく、うどんでもなく、ちゃんぽんでもない「ちゃんらー」は門司港の焼カレーとともに門司港B級グルメとして多くの人に愛されています。
2.ちゃんらー誕生秘話
このちゃんらーですが、どのようにして生まれたのでしょうか?
発祥や由来は諸説ありますが、ここでは一番有名な説を取り上げていきます。
ちゃんらーは門司港の「清美食堂」で誕生しました。昭和30年頃のことです。小浦清美さんという女性がいました。彼女の夫は病気を患い入院しており、清美さんは夫を看病しながら、献血で自らの血を売ってどうにか生計を立てていました。
ある時、ひょんなことから近所の家の一部を間借りし、小さな食堂「清美食堂」を始めます。清美さんの真心のこもった料理はおいしいと評判になり、少しずつ地元で人気の食堂になっていきます。そのうち売上も上がり、小さいながらも自分の店をもつことができました。忙しい時には店内に人が入りきれず、店の奥の自宅のスペースにまでお客さんを招き食べてもらっていたそうです。
そんな清美食堂の常連客の中に、長崎から引っ越してきた、日本人とオランダ人のハーフの女の子がいました。その女の子が、「長崎で食べていたようなちゃんぽんが食べたい!だけど、子どものお小遣いでは食べられない」と悩んでいたところ、当時の店主である小浦清美さんがいりこをつかった清美食堂特製和風だしでちゃんぽん麺を炊き、コストを抑えるためにもやしとキャベツを炒めて一緒に盛り付けて提供したことが始まりです。このきっかけが、元祖・門司港ちゃんらーの誕生とされています。ちゃんぽんでもない、ラーメンでもない、うどんでもない、新感覚の門司港名物「ちゃんらー」は、清美食堂のなくてはならない人気看板メニューとなりました。
1998年、清美さんの高齢や時代の流れによって人が減ってしまったことを理由に、清美食堂は地域住民に惜しまれながらも閉店してしまいました。ですが、2014年に清美さんの子どもたちによって場所を変え、「二代目清美食堂」として再開店しています。再開店後の2016年、東九州自動車道の北九州市と宮崎市間の開通を記念して、九州エリアのローソンでは「二代目清美食堂監修 冷しちゃんらー」が沿線の味コラボ弁当の一環として販売されました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%82%89%E3%83%BC
実は清美さんの息子、小浦一優さんはお笑いタレント「芋洗坂係長」として現在も活躍されています。高校生の頃からダンスに興味を持ち、高校卒業後には上京し、歌番組で田原俊彦さんや中森明菜さんのバックダンサーを務め、ダンサーとして活動していました。肥満体型のサラリーマン“芋洗坂係長”として替え歌とダンスを披露し人気になり、2009年には出身北九州市の北九州市特命大使(観光大使)に任命されています。お笑いタレントとしてだけでなく、多数のドラマや舞台にも出演したり、振付師をしたりなど、その活動は多岐に渡っています。
3.ちゃんらー発祥の地、北九州市門司港はどんなところ?
清美食堂で生まれたちゃんらーですが、ちゃんらーの発祥の町はどんな場所なのでしょうか?門司港の歴史や魅力をさっそく紹介します。
まずは歴史からみていきましょう。
福岡県北部に位置し、関門海峡に面した門司港は近代日本を支えた港町として明治から昭和初期にかけて賑わいました。
明治22年、石炭などを取り扱う国の特別輸出港、貿易港としての地位を確立した門司港は、日清戦争、日露戦争の勃発とともに繫栄していきました。中国大陸からも近く、軍需品や兵士たちを送り出す重要な港である門司港周辺地区では、米・兵器・軍服などの品物を取り扱う商業が発展していきます。
大正3年には門司駅新駅舎(現在の門司港駅)が完成しており、この年の8月には第一次世界大戦が開戦、日本も参戦します。同年11月、日本は中国の青島を攻略し、門司港周辺地区地区は大戦景気で繁栄します。その後、門司港は欧州航路の寄港地にもなり、莫大な利益を上げていきます。大陸貿易もとても盛んになり、中国大陸の満州などへの貿易船の寄港や客船の寄港によって賑わいました。この頃には、神戸や横浜に並ぶ日本三大港のひとつとして頭角を表し、国際貿易における重要な拠点となっていきました。
当時は、大きな商社や銀行が門司に支社や支店を出そうとし、地価が暴騰するほど重要な要所でした。大陸貿易が発展していくとともに、料亭や花街のような食や娯楽の文化も発展していきます。門司港周辺地区には当時から数多くの料亭があり、寄港者が多いことから旅館も多数ありました。中には、高松宮殿下が定期的に訪れていた宿もあったそうです。また、歌舞や音曲などによって酒宴の座に興を添えることを仕事とする女性の芸伎衆も約200人、芸者さんや遊女を抱える置屋も20軒以上あったといわれており、華やかで優美な、風情ある情景が思い浮かびます。
しかし、そんな門司港ですが、第二次世界戦争後は終戦とともに軍需品の取引もほぼなくなり大陸貿易が縮小され石炭の輸出も減ったため、港としての役割は低迷し、衰退していきます。このような流れから1995年には、行政と民間の協力のもと、明治から昭和初期にかけて建築された趣のある建物が残る『門司港レトロ』として生まれ変わり、現在では年間200万人以上が訪れる九州随一の人気観光地として、戦前とは違う形で発展しています。
なんといっても門司港レトロの風情ある街並みは魅力のひとつです。
その中でも有名な建物をいくつか紹介していきます。
- 大連友好記念館
茶と白のタイルの美しいコントラストの外壁、屋根や煙突に取り付けた窓などのデザインも印象的な図書館です。中国・遼東半島にある都市である大連市と門司港は国際航路で結ばれており交流が盛んだったことから、1979年に友好都市を締結し、交流を深めていました。大連友好記念館は、門司港と大連市の友好都市締結15周年を記念に建築された建物です。2018年3月まで国際友好記念図書館の1階は中華料理店、2階は中国・東アジアの文献を収蔵している図書館、3階は資料展示室として運営していましたが、2018年4月より2階、3階は閉館し、2018年10月から観光施設「大連友好記念館」としてリニューアルオープンしています。
- 九州鉄道記念館
九州鉄道記念館は1891年に建てられた旧九州鉄道本社、赤煉瓦ビルを修復して造られました。館内には蒸気機関車や人気列車の実物などの展示、実際に使われていた資料、駅員さんの着用していた歴代制服、各種切符、鉄道用具や駅弁のラベルまでさまざまな展示物がズラリと展示されています。鉄道ファンにはたまらない空間といえるでしょう。
リアル版運転シミュレーター「電車でGO!」も設置されており、門司港駅から西小倉駅間の路線をリアルな風景の中で運転体験ができます。1階に設置されている鉄道ジオラマコーナーでは、現在JR九州で運行している代表的な車両模型を操作しながら車両について学ぶことができます。屋外にはSL、ブルートレインの寝台車、特急電車などの実物展示が設置されており、実際に中を見ることが可能です。またミニ鉄道公園も併設されており、信号機や複線など本物さながらの設備で本物の列車と同じような運転体験ができます。子供から大人まで幅広い世代で楽しめるのでお子様と一緒にお出かけするのもオススメです。
4.ちゃんらーを食べるならここ!門司港オススメ店2選
- ここでは、実際に門司港でちゃんらーを食べてみたい時にオススメのお店を紹介します!
- 二代目清美食堂
★福岡県北九州市門司区東港町2-25
先述したように、ちゃんらー発祥のお店です。
トロッコ潮風号・出光美術館駅から徒歩約5分、JR門司港駅からは約15分。門司港の人気食堂だった清美食堂の優しい母の味を守りつつ、値段もお手頃です。
- 楓や
★福岡県北九州市門司区東本町1-6-24
横並び6人ほど座れる店内は地元の常連客に愛されています。門司港界隈で夜12時まで営業している貴重なお店です。ここのちゃんらーはお酒のシメにぴったり。スープのだしが昆布とかつおのあっさりとした和風仕立てなので罪悪感なく、優しい味わいです。
このほかにも、門司港周辺にはちゃんらーが食べれるお店がいくつかあるようです。皆さんもぜひ、ちゃんらーを味わってみてください。
5.まとめ
今回は、門司港のB級グルメ「ちゃんらー」について解説しました。まさか、芋洗坂係長の実家が発祥のお店だなんて驚きです。皆さんも門司港を訪れた際は、ぜひちゃんらーを体験してみてください。